「elegant」と「elephant」

面積の求め方は知っていますか?
バカにするなと怒られれそうだが、まぁお付き合いくださいな。

例えば上記の1辺10cmの正方形の場合は

10cm x 10cm = 100平方センチメートル

です。

 

同様に上記10cmの正方形に内接する円の場合は、

半径5cm x 半径5cm x 円周率 =「約」78.5平方センチメートル

となりますね。「約」というところに今回の話は1つのポイントがあリます。
上記は円周率(3.141592……)を乗じているので実は
円周率がどこまでも割り切れない無理数なので
「どこまで行っても完全に正確な面積は求められない」なのです。

ここまでの例だと計算で面積を求めるのだが、これらは
リクツを認識していて(ないし計算の仕方を知っている)「数学」の世界。

では下記のシルエット部分の面積を正確に求めることはできますか?

そう、どれだけ数学を駆使してもこのシルエットの面積を「計算」することは容易ではない。
しかしざっくり数える方法はある。

ランダム(「完全」にデタラメ)に「点」をこの中に打ち込んで数えるのだ。
「10個の点をデタラメに打ち込んで、何個がシルエット上にあるか」を数えるのである。
仮に3個シルエット上に点が打ち込まれたのでれば、
100平方センチの10個分の3個だから、
「約30平方センチメートル!」
なのだ。
まぁ10個の点ぐらいでは信頼性は低いかもしれないが、
これが100個、1000個、10万個となってくると話は違う。
仮に10万個ランダムに点を打った中で、28573個がシルエット上に打ち込まれていたとすれば、、、
100平方センチの100000個分の28573個だから、
「約28.573平方センチメートル!」
なのだ。

そんなデタラメな答えの出し方、、、と思うかもしれないが、
これもれっきとした面積の求め方である。
10万個も点を打って数えられない??
いやいや、数えられるのである。
なんたって、コンピュータの時代なのだから。
機械に数えさせればこんなの、ものの1秒かからないのである。
(子供の頃数学のテストでやったことがある人も
いるかもだが(自分はやったことあります)、
縦横を出来るだけ細かくマス目にして黒いところの数を数え尽くす、
なんて方法もあるね)

前者の理屈に基づいて数式で面積を算出する方法が
華麗(elegant)な解の求め方であるとするなら、
後者は力ずく(elephant)で面積を求める方法である。

エレガントじゃない?
いやいや、我々人間は皆エレガントでない部分があるのです。
字はどうやって書けるようになったのかな?
どうやって掛け算できるようになったのかな?
スポーツや、ゲームのルール、仕事のスキル、
生活の習慣はどうやって身につけたのかな?

それらは必ずしも同一ではない、数多くの反復のフィードバックから
身につき得られたもののはずです。
人間は元来elephantから入るのだ。
それを幼稚だといって否定するものではない。

世の中全てが華麗に頭の中の計算どおりに出来るわけなんてない。
むしろ複雑かつ未来のわからない現実に身を浮かべ、
自分なりに身につけたものによって生活している我々は、
シンプルだと言ってバカにするのではなく、
まずはシンプルなものほど身につけ、受け入れておくべきなのだ。

余談だがこのelephantな取り組み方こそ、今どきのAIの学習方法である。
とにかく膨大な数を取り組み、「正解に近づく」、という取り組み方なのだ。

先ほどの円の面積の例で述べたように、「絶対なる正解」というのは、
複雑であるほどなかなかに見出し難い。
であればこそ、elegantにこだわり続けるのではなく、
elephantでもスピーディーに「近いだろう正解」を見出すことの方が
有用なこともあることを我々大人は認識し直すべきだと思うのである。

完璧な規制(法律)がない以上、
大枠をフォローできるルールが最小、最速で提示できれば良い。
完璧な投資運用がない以上、
それなりに利益を出せるなら、簡単、続けられるものの方が良い。
ホテルやラーメン屋の稼働客数を計画しても、所詮それは計画でしかなくて、
さまざまな変数によって実際の数値は違う。経験者のざっくりの見立ての方が価値がある。

完全なものなど得られないし、
完全なものを求めるほど、現実や満足からは遠ざかっていく。

(ちなみに例2の円の問題についてだが、10×10の100平方以下、
内接する菱形(10×10の半分)50平方以上、
だからその中間で75、あと緩い円の部分、ん〜〜〜、
「ざっくり75平方ちょっと!!」と「瞬間」に答えられる子供がいたら、
それは現実を生き抜く実践的な答えとしては100点満点である。
たらたら30秒かけて計算して「約」78,5平方なんて言うより優れている。
ハナマルあげて頭をワシワシ撫でてあげた方が良いと思うのでる。
そういう力を、、、いや、そういう力「も」、
勉強としては身につけさせるべきだと思うのである。)

粗にして野だが非ではない、という感じかな。。。
elegantには憧れるけどね、それが絶対ではないよ、という話でした。

 

(2022/02/07 奥山記)

 

 

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6件のコメント

  1. elegantなコメントにも憧れますが、elephantで行きます。
    的外れかも知れないけれど、『読んだよ』を伝えたいので。

  2. 目的に応じて、どこまでElegantさを追求するのか、どれくらいのElephantが許容されるのか、意識して判断するよう心がけたいと思いました。シルエットの面積、僕も方眼線を入れてマス目を数えました〜 今回のシルエットなら正方形を縦に3分割した真ん中の長方形の面積よりも小さいので33平方以下という回答はすぐに出せそうですね。

  3. 内容そのものもとても面白かったんですが、「elephant」にゾウ以外の意味の用法があったことがとても新鮮でした。ウェブで「elephant 意味 スラング」などと方々検索していろんなサイトを見てまわりました。それが面白かったですし、新しい発見がありました(^^♪
    また、「粗にして野だが卑ではない」というフレーズも気になり、誰のコトバなのか、語源は?、などいろいろ検索してまわりました。
    とにかく、記事から派生していろんな刺激を受けましたし、記事の内容のみならず、知識欲や雑学欲が満たされて楽しかったです(*^^*)

  4. たらたら30秒かけて〜というところから
    時間かけて悩むより行動しろと読み取りました。

    投資で言えば
    バックテストよりフォワードテストでしょうか。いや話がズレ好きですかね。
    フォワードテストやるにしても資金管理を知らなければ御破産、即行動であっても最低限抑えるところは抑えねばと。

    これからも先生から学びつつ、頭でっかちにはならないようにしていきたいと思いました。
    また、今までフィードバックができておりませんでしたが、これからはしていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。
    ありがとうございました。

  5. 自分が納得できる一つのやり方を習得して、それを別のものに応用するというのは、現在自分が取り組んでいることです。応用対象の適不適の判断とか、取り組み方向とか、全体としてのリスク低減とか難しいことが多いです。記事の更新を楽しみにしています。

  6. 初めて見たものは
    とりあえずelephantで行こうと思います。
    その方が流れがいいですしね。
    興味深く読ませていただきました。
    ありがとうございました。

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