投資におけるAI

寝覚めが悪いのでまたかと思われるかもだが
AIの話の3部作?を完了させたいと思う。
今回は「投資におけるAI」について。

現在「AI投資」などと謳われているものは宣伝文句として
「客引きが良い」のでその呼称なのであって、
実際のところどういうものなのかは「かなり」怪しい。
なんちゃってなグリッドトレードや簡易に作ったプログラムトレードだって、
言いようによってはエキスパート型の簡易「AI」である。
いやいや。それは今どきAIじゃなくって、ただのシストレエンジンじゃん。(笑)

ここまでの2回で述べてきたように、
今どきのAIなら「深層強化学習型AI」である必要がある。

でもって深層強化型AIに話を限定させると、
同じく説明してきたように深層強化型AIはブラックボックスなのである。
学習させたよ、という
「ブラックボックスに投資行動を任せてみませんか?」
という話なのである。

過去のトラックレコードのエビデンスがあるって???
そんなもんは実績なのかシミュレーションなのかを示してから言え!である。
(後付けのバックテストの結果なんかには何の意味もないものね)
よしんば実績なのだとしても、ブラックボックスなのだから、
人間のファンドマネージャに任せているのと実はあまり変わらない。
(それでも人間よりはマシと思う、というならそれで良いけど。
蛇足だがM○4のアルゴなんかは実は裏側で「人間が生トリガーしてる」ものも
多いよ。気をつけてね。)

加えるなら利用する深層強化学習AIは常に学習し続けているわけではない。
ある期間までのデータを学習させて、
「うん、まぁこんなくらいでいいんじゃないか?」
と提供・採用する会社(金融機関?)がOKを出した学習結果で一旦は固着する。
そう、顧客に宣伝し、利用させるAIは「学習し続けない」のだ。
もちろん開発者はその後も学習を続けさせているだろうが、
そうやってできたAIは、「別物」である。
(デルタ株とデルタ・プラス株みたいなもんです、、、って余計わかんないか。)
当然、その別物を利用者向けに採用するには会社としての再びの「承認」が必要になるし、
そうやって承認されたものが「規約(免責条項等)の範囲内」
において採用されるわけである。
つまり自動的に学習し続け実装され続ける自動進化型ではない。

次に、学習を続けるとどうなっていくのだろうか?
売買するべき判断ポイントやロスカット、保有ポジション量が変わる。
当然パフォーマンスが変わってくる。
9.11やブラックマンデーを学習したAIと、
そうでないAIでは当然動きが変わってくる。
今後日経平均が1日で2000円下落・上昇する局面があったとしたら、
予期せぬロスカットをくらってしまったとしたら、
それを学習していないAIと学習したAIの動きは違ったものとなることとなる。
つまり「これまでの事象の想定外」はAIには織り込まれていない。
もうちょっと言うなら相場の動きは人間の織りなすものだから、
投資対象や銘柄によって動きが同じようで結構違う。
外国為替を取引するのと個別株を取引するのは違うのである。
なので、それぞれの学習用サンプルが必要となるわけだが、、、
深層強化学習で安定した成果を示させるにはどうにも圧倒的にサンプル不足のように思う。
(AIの学習については先2回の話を参考にしてみてほしい。
同じものを投資として人間が取り組んでいるのだから、
知らないで相場はってる人間よりはマシな結果にはなるのかもしれないが、
それでもそれが普遍的、汎用的なものである、ということは示さない。)

ついでに。
究極のところ最高の意思決定をするAIが出来て、それがマーケットを席巻したとする。
1つではなく2つ同じAI同志を戦わせた、取り組んだ結果はどうなるだろうか。
投資はゼロサムゲームである。ある者が勝ち、他が負ける。
利益を出す者の反対には、必ず損失を出す者が必要である。
将棋だってそうだが同じAI同志で戦ったとしても必ず「勝敗」が最後は発生する。
引き分けがない以上、同じAIを使ったとしても儲かる者と損する者が発生する。
同じAIを使ったところで、皆が上手くいくわけでもないのである。

そこまでわかってて、それでもAIの方が自分が投資するよりマシだから、
と割り切って言うなら話はわかる。
しかしAIを魔法の杖のように盲信しても、AIだって万能、完全ではない。
ポジション管理やリスク管理に限定して使うならいいと思う。
しかし自動車の運転のようにインシデント(発生事象)に対し
複雑だが原則同じ操作をし同じ結果を導きたいものや、
音声認識のように普遍的な部分を高度な計算機としてAIに任せるのは良いと思うが、
変化し続ける状況とその解に対して柔軟な意思決定が求められ、結果も変化し続けるものを
ブラックボックスであるAIに判断を委ねすぎても、あまり明るい未来はない。
(「将棋じゃなくって、実は囲碁でした〜、さてどうする?」とか、
「ここから先はババヌキのババは3枚でーす」となる可能性はないのか?ということ。
今の所、AIは臨機応変に「おっけー、それならね、、、」という対応はしてくれない。
「これまでの最適解」と「そこまで読むか」とは違うのである)
(テクニカル分析がダマシばかりなのと同じように、
主流のAIが出来たとすれば、むしろそれは打ち負かす格好のターゲットであり、
狙い撃ちすべき美味しい獲物という風にも僕には見える。)

結びとして。
コンピュータ、機械は確かに便利な道具である。
しかし、人間が人間たる創造性を失ってはいけない。
機械に負けてはいけない。まして機械を盲信し機械に踊らされてはいけない。
天気予報以上に、相場は難しい。
人間の欲の綱引きの戦いなのだから。
明日売るも買うも個人の自由。1億円損しようが耐える人間もいる。
人間が完全合理的な意思決定ばかりをしないのだから、
合理的な戦法ばかりを唱えても確実に勝てるというものでもない。
人気(人間の気持ち)に絶対はない。想定はできても、完全にはわからない。
どこまでいっても不確定事象な、そんなものを完全に予測する術はないし、
万能なパターンアルゴリズムを獲得することは出来ない。
我々にできることは自己の限られた資金を相場という波の中で
適切にコントロールし続けることくらいである。
(その為の支援AI(高級計算機)というなら話はわかる)

そんなこんなで、
機械なんてなんぼのもんじゃ。所詮機械なんて機械でしかないわ。
と機械の上前をはねるくらいに、AIなんかに負けない自分でいないと、
人間の人間たる価値の存在理由(レゾンデートル)が失われてしまうと思うのである。

(それなりに全般、詳しい自分がそう言うのである、
と言うことだけでも覚えておいてほしい。これにてAIの話は終わりです。)

(2021/11/20 奥山記)

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2件のコメント

  1. AIを使用するなら
    『ポジション管理やリスク管理に限定』
    高級計算機として使用するを忘れないようにします

  2. AI三部作面白かったです。
    これにてトリロジー完ではなく、
    ぜひ続編やスピンオフストーリーをお願いします!

    AIが人間に勝る部分は、
    寝たり休んだりする時間が極端に短いとか
    感情や体調に行動や判断が左右されないとか
    同じ仕事を繰り返しても耐えられるとかいった部分で
    知能や対処能力では無いと思います。

    機械に任せられることは機械に任せ、
    人間は創造的な仕事に集中すべきだと思います。

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