借りた金は返さねばならない。

当たり前のタイトルがついてるが最近は
それが一部では当たり前ではない風潮でもある。
なんせ「なんたら法律事務所」などが
こぞって「利息返ってくるから任せろ」などと
TVCMまでバンバン打っているのだから世も末である。
(金銭問題の仲介なのでそのなんたら法律事務所はそれをタネに回収できた成功の暁に半分近くノーリスクで報酬として得るのだから弱い者の味方というよりは無知な弱い者の権利をかすめ取っているハイエナのように自分には見える)
(脱線するが、司法試験の合格率、合格人数が上がり誰でもと言ったら怒られるが、
知識のない取り立て屋の手先としてしか機能できない弁護士が量産されているのは
いかがなものなのだろうか)

たとえ高利だろうが、戦前戦後のように高利と知らず借りた、肩代わりした、
トイチ(10日で1割)の沼にハマった、借金がために吉原に娘を売った、
などということをさすがに見かけなくなった世情である以上、
お金を借りたいときに貸してくれた人に借りた者は心から感謝すべきであるし、
借りた金は必ず返すという自負を持って臨むべきなのは至極当然のことである。
(シャイロックよろしく、とかく金を貸す人間は悪者だという風潮があるが、
返さない、利払いが遅れる者もいるリスクを含み金を貸す人間は人徳者である)

カネを借りた人間は感謝こそすれ居直るべきではない。
破産宣告してチャラになろうがなるまいが、
一生かけてでも貸してくれた人の恩には報いるべきである。
法律なんてどうでもいい。
「借りた金は返さなければならない」
借りた側としては、この気概は当たり前であるが、重要である。

今回は借金論を話したいわけではない。そんな下衆な話ではないのだ。

故人であるが、財務次官であった香川俊介氏の生前を想う話である。
私が初めてお会いした時は主計局主計官の肩書きの頃であった。
会社が霞ヶ関の近くにあった関係もあり、私のような若輩に
たまには世間の話を聞かせろと昼食を数度ご馳走までしていただいたことがある。
穏やかかつ人なつこく、とても思慮深い方であった。
言うまでもなく財務省といえば国家の財政を預かる大金庫番であり、
財務次官はその事務方のトップ。
氏は最後の最後まで我がこととして膨張する国家債務のことを案じ続けておられた。

(私はマーケットオリエンテッドな消費税の段階的撤廃論者ではあるが)
国家財政を立て直すことは重要なことであり、
財政の無駄遣いをやめ、行政の効率化を図り、債務は一掃すべきだと強く思う。
色々な理由はあれど、どだい年収600万円の人が収入以上に毎年1000万円を
超える支出をしているような状態が長く続けていることがおかしいのだ。
国の借金は膨らみ、歳入60兆円に対して歳出は100兆円を毎年上回る。
金利を省いた国家財政の経常収支を合わせるという「プライマリバランス」ですら
有事有事と理由をつけ先延ばしにし支出を増大させ続ける日本政府により
掲げているプライマリバランスの2025年達成など完全な絵空事になりつつある。

金利以外の経常収支をプラマイゼロに合わせればいい??
いや。それでは国債の金利支払い分はどうなるのか。金利支払い分だけ、
また借金が雪だるま式に増えていくではないか。
経常収支のバランス(釣り合わせ)は「まず」の通過点なのであって、
当然、「金利支払い含めて」財政収支を合わせなければならない。
いや、それだけではない。
冒頭の話に戻るが「借金は返さなければならない」のである。
国家を破綻させるわけにはいかないのだから。

私の文章力が乏しく伝えきれないのが悔しいが、
香川氏は増え続ける国家の債務を自分が借りた金のように重く受け止め、
ずっと悩み続けておられた。
「奥山くん、金利をゼロにすることはできるかもしれないが、
借りてしまった金をなかったことにすることはできないんだよ。
借りた金はいずれ返さなければならないんだ」
あぁ、この人は本当にお国の金庫番だ。国の宝だ。
自分が作った借金でもないのに、その責任を引き受け、
こんなにも国家の財政を案じ自分のこととして苦しんでいる人がいる。
それに比べ、なんと自分のちっぽけなことか。そう思ったものである。

(こんな話をしても与野党含め性根で国の借金のことを受け止めている政治家は
僕の知る限りでは現与党の副総裁くらいしかいない。)

返せるなんて思ってない。
返す気なんてない。
その時は自分は責任者じゃない。
今の風を自分に持って来れればいい。
今やったとを示せればいい。
支出は増やすもの。
予算はぶんどるもの。
規制はかけるもの。
返すのは自分ではない。
それが仕事と思ってる政治家や役人が多すぎる。(いますけどね)

借りた金は返さねばならない。
その責任とともに金は借りなければならない。

(2021/11/02 奥山記)

参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/香川俊介
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴェニスの商人

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1件のコメント

  1. 憂国の士がいたことを思い出させていただきありがとうございます。
    福祉ににしてもエネルギーにしても国家債務と同じで
    次の世代に先送りされている感じがしますね。
    自分の通っていた高校では、国家のために
    明け暮れ学べと教わりましたが、
    自分には何ができるだろうと
    考えさせれれました。

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